最上のわざ
2012.2.16少子化問題の根底にあるもの
2012.2.16“Yes we can!”(「我々にはできる」)というキャッチ・フレーズを掲げて、アメリカの国民に変革を訴え、アメリカの初黒人大統領となったバラク・オバマ氏。就任式の時に、彼はアブラハム・リンカーンが使っていた聖書に手を置いて、宣誓をしました。示唆に富んだ歴史的瞬間でした。アブラハム・リンカーンは、156年前に、南北戦争の真っ最中に、奴隷解放令を発した人です。南北戦争が勃発した時、最初は、合衆国の統一を守るために戦うと言っていましたが、途中から、奴隷の解放のために戦おうというビジョンを掲げたのです。奴隷解放令は南部の人々から一笑に付されただけでなく、連合軍の反感を買うことにもなりました。連合軍の90パーセント以上の人々は、「我々は、国がバラバラにならないために戦っているのであって、黒人の自由のために戦っているのではない」と猛反発をしましたが、リンカーン大統領は、全く動じることなく、ビジョンを変えようとはしませんでした。
結局、1865年に、連合軍が勝利を収めて、奴隷たちが解放された訳ですが、黒人が本当の自由を勝ち取ったのは、その100年も後のことです。奴隷制度が廃止されても、南部の各州において、黒人に対する恐ろしい差別が続きました。例えば、黒人がバスに乗る時、バスの一番後ろの席にしか座ることが許されませんでした。入ってはならない白人専用のレストランや公衆トイレが至る所にありました。また勿論、教育面においても、就職面においても、多くの差別があったのですが、1950年代に入って、再び、リンカーンのビジョンを取り上げた人物が現れました。マーティン・ルーサー・キング牧師でした。「奴隷解放令が出てから100年も経つのに、黒人は未だに自由を得ていない。本当の解放のために戦おう」とビジョンを掲げた訳ですが、それは非暴力的抵抗という戦い方でした。黒人はバスの前の席に座ったり、白人専用のレストランに入ったりしました。そこで、罵声を浴びせられたり、殴られた、逮捕されたりしましたが、抵抗せずに、ひたすら耐えました。その地道な努力が実って、ついに、1964年、黒人の人権を認める法律が成立したのです。しかし、それでも、多くの白人(私の父も含めて)の中に、「黒人は白人に劣る人種だ」という考え方が根強く残っていました。また、言うまでもなく、「黒人が大統領になるのはあり得ない」と一般的に思われていましたが、昨年の11月に、そのあり得ないことが起こりました。オバマ氏の勝利が正式に発表されると、嬉しさの余り、涙を流す黒人が多く見られました。145年の長い歳月を経て、リンカーンのビジョンが100パーセント実現した瞬間でした。
聖書は、こう述べています。
「善を行なうのに飽いてはいけません。失望せずにいれば、時期が来て、刈り取ることになります」(ガラテヤ6・9)。
私たちも、人のためになるような良いビジョンを掲げながら、なかなかその実現を見ないことがあります。そのビジョンを諦めたくなることもあるかも知れませんが、すべてのことに、神の時があります。大事なのは、失望せずに、待ち続けることです。
“Yes you can!”あなたにも、きっと、目標を達成することができるでしょう。