2006年8月、京都大学の山中伸也教授が、人の皮膚から取った細胞に遺伝子を入れて培養したことにより、「万能細胞」ができました。「万能」と呼ばれるのは、神経細胞、心臓細胞、臓器細胞、血液細胞、軟骨細胞などが作られるからです。つまり、「万能細胞」は、どの臓器にも分化できる能力(分化全能性)を持っているのです。
今、臨床で細胞レベルでの移植が行われており、放射能治療などを行った後に血球の回復をはかる治療法や、心筋梗塞などによって心筋細胞が死んでしまった場所に注入して細胞再生をはかる治療法や、アルツハイマー病などに対する治療法などの応用が進められています。将来は、精子や卵子も作られるようになる、と言われています。
ある科学者は、万能細胞ができたことを、「ライト兄弟の初飛行機と同じくらい重要な出来事だ」と評価しています。また、「いよいよ、ホームメード医療の時代の到来だ」と喜んでいる人もいますが、確かに、驚くべき進歩だと言えましょう。しかし、問題が全くない訳ではありません。どこまで再生医療技術を進展させて良いか、安全性はどうなのか、人権はどう擁護されるか、人工人間(クローン)を作る研究や実験が再び進むようになるのではないか、などの疑問があります。これらの重要な問いに対する明白な答えもないまま、新しい知識がどんどん利用される可能性が十分にあります。そうなった場合、恐ろしいことも起こり得るのです。
人間は原子力発電所を作ることもできれば、原子爆弾を作ることもできます。今、必要なのは、すべての研究者が造り主なる神の主権を認める謙虚さです。人間が大きな力を持つと、自分が神になったかのような錯覚を起こします。更に、自分中心的な価値観(基準)に基づいて行動するようになるので、当然守られるべき人権が踏みにじられる事態が発生します。命を与えてくださった神の存在を認めて、神の前で何が正しいかを真剣に考えるべきです。
もう一つ重要なことは、神を信じなければ人の心は満たされない、ということを学ぶことです。「万能細胞」によって医療技術が飛躍的に進歩して、人の寿命が伸びたとしても、霊的に満たされて、生きる目標がなければ、果たして、どれほどの意味があるのでしょうか。場合によっては、「万能細胞」は苦しい人生の終結を、ただ先送りするだけの結果をもたらすかも知れません。そうです。体の再生ができても、人の心に生きる希望を与えることのできない「万能細胞」は、万能ではないのです。
聖書は、万能なのは造り主なる神だけである、と述べています。
「ああ、神、主よ。まことにあなたは大きな力と、伸ばした御腕とをもって天と地を造られました。あなたには何一つできないことはありません」(エレミヤ三二章一七節)。
これは、エレミヤという預言者がささげた祈りの一部分です。エレミヤは、堕落したユダヤの民のために、神から与えられた悔い改めのメッセージを忠実に伝えた人ですが、彼のメッセージに応答した人は、一人もいませんでした。むしろ、人々はエレミヤを激しく迫害したのです。しかし、それにもかかわらず、エレミヤは最後まで務めを果たし、力強い人生を全うしました。それは、日々、神の全能の力によって、心が再生されたからです。
あなたの心には、霊的な「万能細胞」がありますか。