出生率の低下という難問
2013.10.28最も幸運なオリンピック選手
2014.2.20アメリカの中西部、特にオハイオ―州とペンシルバニア州にアーミッシュというクリスチャンのコミュニティがあります。ドイツ系移民の宗教団体ですが、移民当時の生活様式を保持し、農耕や牧畜によって自給自足の生活を営んでいます。昔の生活様式を守るために電気を使用せず、現代の一般的な通信機器も家庭にはありません。移動手段は馬車です。服装も極めて質素です。基本的に大家族主義であり、一つのコミュニティは深く互助的な関係で結ばれています。新しい家を建てる時には親戚・隣近所が集まって取り組みます。また、独自のコミュニティを築きながら、外部の人に対しても協力したり、農作物を分け与えたりしています。とにかく、平和を愛するとても優しい集団ですが、7年前に、ペンシルバニア州にあるアーミッシュのコミュニティで悲劇が起きました。拳銃を持った男がアーミッシュの学校に入って5人の児童を射殺し、その直後に自殺をしました。
アーミッシュの人々だけでなく、犯人の奥さんとその家族も筆舌に尽くしがたいほどの衝撃を受けました。それは、事前にその犯行の兆候が何一つ見られなかったからです。奥さんのマリー・モンヴィル氏は出版されたばかりの本(”One Light Still Shines”:『一つの光はなお輝いている』)の中で、当時の状況を詳細に記しています。彼女はまだ20代の方で、3人の小さい子どもがいましたが、まさか穏やかな性格を持った自分の夫がそのようなひどいことをするとは夢にも思わなかったそうです。ですから、警察からいきなり電話がかかって来た時に、ショックの余り、放心状態になりました。数時間後に、彼女の家に、子どもを殺された父親たち5人が、やって来ました。彼女はますます、パニックに陥りましたが、いきなり、アーミッシュの男性たちに言われました。
「私たちは、あなたのご主人を赦しました。あなたを助けるために、私たちに何か、できることはありませんか。」
その言葉でどんなに心が癒されたか分からないと、マリーさんは述べています。
本の中で、もう一つ、アーミッシュの人間常識を越えたエピソードが紹介されています。マリーさんは事件後、約1週間、親族にかくまわれて、また警察の協力を得て、マスコミの襲撃から守られましたが、夫の葬儀と埋葬式のために、どうしても外に出なければなりませんでした。自分と子どもたちの写真が全国の新聞や週刊誌に掲載されることを恐れながら、車に乗りました。埋葬式が行われることになっていた墓地に着くと、やはり、カメラを持って、多数の報道人が待ち構えていました。マリーさんは覚悟を決めて、子どもたちと一緒に車を降りようとしました。その瞬間です。突然、どこからともなく大勢のアーミッシュの人々が現われて、マリーさんの一族と報道人との間に壁を作ったのです。そのために、新聞等に写真が載ったのは、異常な行動を取ったアーミッシュの人々だけでしたが、実は、アーミッシュは宗教上の理由で、写真を撮られることを極端に嫌う人々です。彼らは、モーセの十戒に含まれる「あなたは、自分のために、偶像を造ってはならない。上の天にあるものでも、下の地にあるものでも、地の下の水の中にあるものでも、どんな形をも造ってはならない」という言葉を厳守するのですが、マリーさんの家族を守るために、自らの戒律を破った訳です。
私はこの話を読んで、深い感激を覚え、涙が出ました。アーミッシュこそ、キリストの愛を実践した人々だと、心底、思ったのですが、結果的には、学校で起きた惨事よりも、アーミッシュの事件後の不可解な行動が世界中のマスコミで大きく取り上げられることになったのです。そして、アーミッシュを通して、キリストの愛を知るようになった人々も多くいたことでしょう。
「私たちがまだ弱かったとき、キリストは定められた時に、不敬虔な者のために死んでくださいました。正しい人のためにでも死ぬ人はほとんどありません。情け深い人のためには、進んで死ぬ人があるいはいるでしょう。しかし私たちがまだ罪人であったとき、キリストが私たちのために死んでくださったことにより、神は私たちに対するご自身の愛を明らかにしておられます」(ローマ5章6―8節)。