宗教的な理由で、エホバの証人が輸血を拒否して、我が子を死亡させてしまうということがよくニュースになりますが、アメリカのユタ州に住むモルモン教の夫婦が、息子にガン治療を受けさせないで、今、逃亡中です。12歳になるパーカー・ジェンセンは、三つの病院で「イウィングズ・サルコマ」という珍しい種類のガンだと診断され、すぐに科学療法、及び、放射線による治療を始めなければ命が危ないと言われました。ところが、両親は、「本人はいたって元気だし、病院が勧めている治療を受けさせれば、彼の生育に悪影響を及ぼす恐れもあるし、子供ができなくなる可能性もある」と言って、治療を拒否していました。それに対して州の政府は、治療のために子供を引き渡すように命令書を発布しましたが、両親はそれを無視して、今、子供と共に行方をくらましています。親がなぜ、我が子を助けるための治療をそこまで頑固に拒むのか、マスコミでは大きななぞとされていますが、ジェンセン夫妻の行動を理解するカギは、モルモン教の教理にあると考えられます。モルモン教徒が神になるために、結婚して、子供を設けることが義務づけられています。科学療法などを受けて、子供ができなくなると、神になる希望がなくなるので、何が何でも治療を拒否すべきだと、両親が判断した可能性が大いにあります。もしそうであるとするなら、地上の楽園に復活する見込みを保つために、輸血を拒否して死を選ぶエホバの証人とよく似ている、ということになります。また、興味深いことに、ジェンセン夫妻は、「科学療法や放射線による治療に代わる治療を受けさせたい」と言っています。これも、輸血以外の治療法を病院に要請するエホバの証人と共通 している点です。