目次
第7章:NARの問題点 その五 「的中率の低い預言者たち」
預言の20%しか当たらない?
NARの預言者たちは、旧約聖書の預言者たちと同等の権威が与えられているとして、個人に対しても、教会に対しても、また国々に対しても、神のみこころを明らかにするメッセージを語る。個人への預言の中に、誰と結婚すべきか、どのビジネスに投資すべきか、どこに住むべきかなどの問題に関する助言も含まれる。教会に対して語る場合、どのようなビジョンを持つべきか、どのような悪霊が教会の活動を妨害しようとしているか、教会に対する神のご計画は何か、誰が教会の一致を壊そうとしているかなどの課題を取り上げる。国々に向かって語る預言は、神の裁きに関する警告であったり、自然災害の予告であったり、指導者への助言であったりする。預言者たちの存在が認められると、国々の首脳たちは自ら、預言者の導きを求めるようになるそうだ。著名な預言者として知られているビル・ハモン氏は、「神が預言者を通して語られた言葉にどう対応したかによって、国々は興され、また倒される」と語っている。[1]
こうして、預言者は極めて重要な役割を担っていることになる。しかし、それにもかかわらず、NARの預言者たちは、預言の的中率は20%以下だと認めている。[2] 前述のとおり、シンディー・ジェイコブス氏が代表を務める”Apostolic Council of Prophetic Elders”(預言者的長老たちの使徒的協議会)より毎年、”The Word of the Lord”(「主のみことば」)が発表される。ところが、1999年から始まったこれらの預言を調べると、当たらなかったものが目立つ。2017年にアメリカのデトロイトとシカゴでリバイバルが起き、イスラエルのハイファとナザレは神の大いなる力の現われを見ることになっていたが、何も起こっていない。2016年に日本の大学において大きなリバイバルが起きると預言されていたが、そのような兆候は微塵も見られなかった。2014年にはイランの原子力発電所の計画は失敗に終わると預言されていた。2009年には授業が中断されるほど、アメリカの公立学校に神の栄光が現れると言われたが、何も起こっていない。2006年にはアメリカのブッシュ大統領は人気を取り戻し、イギリスは過渡期を迎え、スェ―デンはその各地で聖霊のみわざを見るはずだった。2005年に30万人の犠牲者を出すパンデミックがアジアで発生し、アメリカのロスアンゼルスで大地震や洪水が起きると言われていた。
「主のみことば」には、漠然とした内容が多く、的中した預言が全く見当たらない。逆に、その年その年にあった歴史的なニュースを、預言者たちが全く予想できなかったことに驚く。例えば、2001年の「主のみことば」には、アメリカの同時多発テロに関する言及は皆無だ。2008年に史上初の黒人大統領の誕生を予測した人は一人もいない。2011年3月11日の東日本大震災を預言した人もいない。シンディー・ジェイコブス氏はこの事実を認めて、「当たらなかった預言があると、それを訂正するしかない」と述べている。[3] また、『神の声』の中で、「偽の預言がなされることはありますが、預言の賜物の価値は、起こる可能性のあるどのような問題にも増して大きなものです」という不可解な告白をしている(102ページ)。
預言者を見分ける聖書的基準
聖書の中に、偽預言者と本物の預言者を見分けるための、明白な基準がある。それは、預言者の語ったことが実現したかどうかを調べなさい、ということだ。
「ただし、わたしが告げよと命じていないことを、不遜にもわたしの名によって告げたり、あるいは、ほかの神々の名によって告げたりする預言者があるなら、その預言者は死ななければならない。あなたが心の中で、『私たちは、主が言われたのでないことばを、どうして見分けることができようか』と言うような場合は、預言者が主の名によって語っても、そのことが起こらず、実現しないなら、それは主が語られたことばではない。その預言者が不遜にもそれを語ったのである。彼を恐れてはならない」(申命記18:20-22)。
この基準で判断するなら、NARの預言者たちは明らかに偽物だ。しかし、驚いたことに、聖書の基準はNARの預言者たちには当てはまらないそうだ。ビル・ハモンによると、その理由は、「教会時代の預言者たちは、旧約時代の預言者たちより多くの恵みを与えられているからだ」ということだ。[4]
トッド・ベントリー氏の任命式
2008年6月23日に、C・ピーター・ワグナー氏、ビル・ジョンソン氏、チェ・アン氏、ジョン・アーノット氏が、トッド・ベントリー氏の伝道者としての任命式を行なった。その時、ベントリー氏は、アメリカのフロリダ州で起こっていた「レークランド・リバイバル」のリーダーとして公に認められると同時に、ビル・ジョンソン氏、チェ・アン氏、ジョン・アーノット氏のネットワーク(リバイバル・アライアンス)に正式に加入し、3人の使徒の「覆いの下」に入った。
また、任命式の中で、数々の個人的預言があり、ワグナー氏より、次のような言葉が語られた。
「私は神から授けられた使徒的権威をもって、トッド・ベントリー兄弟に告げます。あなたの力は増します。あなたの権威も増します。人から受ける好意も増します。あなたの影響力も増します。啓示も多くなります。あなたを通して、新しい超自然的な力が流れるようになることを宣伝します。」
ところが、任命式が行われた2カ月後、突然、ベントリー氏が奥さんと別れることになり、レークランドのリバイバルから手を引くことが発表された。更にその後、リバイバルが行なわれている間中、大量に酒を飲んでいたこと、また一人の女性スタッフと不倫をしていたことも判明した。
ベントリー氏はしばらく、公の場から姿を消したが、その半年後に再び、預言者として立ち上がっている。2017年12月10日のメッセージの中で、2018年に関する預言を主の御名によって語っており、2018年は、「大いなる収穫の年となる」そうだ。
今後も懸念される被害
預言者たちの活動に伴い、まず懸念されることは、実現しない預言を信じていた人々が多大な被害を被るのではないか、ということだ。既に述べているように、2005年に南カリフォルニアで大災害が起こると預言者たちから聞いた人々は、難を逃れるために家を処分したり、賃貸契約を打ち切ったりして、引っ越しをしている。転職せざるを得ない人もいた。また、預言者からの指示に従って、ある企業に大金を投資したが、結果的に失敗して自己破産を余儀なくされた人々のことも報告されている。[5]
次に、預言者に対する依存症が強まる恐れがある。現代人の一つの際立った特徴は、自信の無さだ。自分で考えて判断するより、人に頼ってしまう傾向が強い。特に、「私は神の霊を注がれた預言者だ」と主張する人間がいると、自らの人生の責任をその人に委ねてしまう可能性が高い。これは、前述のとおり、マインド・コントロール的な関係であって、この関係が続く限り、人間としての成長が止まってしまう。思考力、判断力、決断力等が低下して行くばかりだ。
第3番目に、預言者の語ったとおりにならなかった場合、精神的なダメージが心配される。預言者を信じていた人々の間に、鬱病等が必然的に発生する。神に対する信仰がなくなり、「宗教はもう、こりごりだ」という人も、続出することになる。
第4番目に、NARの「七つの山の制覇」のビジョンにあるように、預言者たちが政治界において影響力を持つようになり、国々の指導者に対して助言をしたり、あるいは将来に関する予想を言ったりすることが考えられるが、彼らの言葉を神からの導きとして受け止めた指導者がいたとして、その助言に従った場合、間違った政策の選択をし、大混乱を引き起こす可能性が出て来る。現時点で、預言が的中しない確率が80%だからだ。
- Bill Hamon, Prophets and the Prophetic Movement (Shippensburg, PA: Destiny Image Publishers, 2001), 178.
- Kent Philpott, False Prophets Among Us (San Rafael, CA: Earthen Vessel Media, 2017), 81.
- youtube.com/watch?V=d34JyMLOnzU (※現在視聴不可)
- Bill Hamon, Prophets, Pitfalls and Principles: God’s Prophetic People Today (Shippensburg, PA: Destiny Image Publishers, 2001), 101.
- R. Douglas Geivett & Holly Pivec, God’s Super-Apostles (Wooster, OH: Weaver Book Company, 2014), 42.