スペインの教会の柱に描かれていた百二十年前のフレスコ画が一般信徒の手で修復されて、原画とは似ても似つかない状態になっているのが見つかり、地元で大騒ぎになっています。修復が行なわれたのは、スペイン北東部ボルハの教会にある一九世紀の画家エリアス・ガルシア・マルティネスの作品で、「この人を見よ」という絵です。茨の冠をかぶったキリストの肖像が描かれていました。修復を手掛けたのは教会員のセシリア・ヒメネスという八二歳の女性です。地元メディアの取材に対して、「司祭に頼まれたからやっただけだ」と話しています。作業は堂々とやっており、他の信者たちも見ていましたが、誰も止めようとしなかった、ということです。変わり果てたその姿に、地元に住むガルシアの孫のテレサ・ガルシアさんは、「作品が破壊されてしまった」とショックを受けています。作品を元通りにできる手段があるかどうか不明ですが、そのまま残して、観光客を引き付けるために使ったらどうか、という話も出ています。この間のテレビのニュースによると、既に、巡礼客が教会に殺到しているそうです。修復前の観光客数は十人、修復後は五千人です。教会への献金も増えています。ボルハの人口は五千人ですから、町の人口が倍になる訳で、市長さんもその経済効果に大きな期待を寄せています。もしかすると、苦しい状況にあるスペイン経済の救世主になるかも知れません。
普通に考えるなら、セシリアさんはとんでもないドジをやったということになります。取り返しのつかない失敗をしています。しかし、その大きな失敗が、教会と町の益に変えられているのです。
旧約聖書の創世記に、ヨセフという人物が登場します。彼はヤコブの十一番目の息子として誕生しましたが、兄弟たちを治める王となるという、神からの夢を与えられました。その夢の話を聞いた兄弟たちはヨセフを憎むようになり、奴隷としてエジプトに売り飛ばします。十三年間、エジプトで苦しんだヨセフですが、神の摂理によって、エジプトの総理大臣になります。その七年後に、全地が大飢饉に見舞われます。しかし、神の啓示によって災難を予知していたヨセフは、食物の蓄えをして、エジプトの国民だけでなく、カナンにいた父親、兄弟たち、またその子どもたちを救うことになるのです。ヨセフは兄弟たちに対して、こう述べています。
「あなたがたは、私に悪を計りましたが、神はそれを、良いことのための計らいとなさいました。それはきょうのようにして、多くの人々を生かしておくためでした」(創世記五〇章二〇節)。
聖書の中で何でも語られていることですが、神はすべてのことを働かせて、益としてくださることのできるお方です。例え、どんな失敗でも、神の計画の中で用いられることが可能になるのです。神は、私たちの傷ついた人生の絵を修復する名人です。あなたも、そのみわざを期待してください